ロレックスが時折定価を改定する事は周知の事実かとは思いますが、ここ数年その頻度が上がっています。
よくお客様とお話をしていると「昔は〇〇万円だったから安かったから買っておけば良かった」というワードを耳にする事があります。まあ現代は当時とは物価や状況、為替等も大きく違う為、必ずしも当時はお買い得だったと判断する事はできませんが…。あくまでも現代のロレックスのプレ値は結果論ですしね。
ここではデイトナを例に挙げ、定価の推移や歴史を見ていきたいと思います。
1965年
6239 ¥148,000
ROLEX / 6239
1965年は昭和40年、アレクセイ・レオーノフ氏が人類初の宇宙遊泳を行ったり、日本最初のカラーテレビアニメ『ジャングル大帝』が放送開始された年でした。
また、カセットレコーダーやかき氷の赤城しぐれ、スーパーボールもヒットしました。
ちなみに「しごき」や「やったるで」が流行語になったそうです。
1975年
6263 ¥267,000
6265 ¥267,000
ROLEX / 6263
ROLEX / 6265
デイトナ第三世代の6263と6265がここで登場します。(デイトナ第二世代のREF.6262は流通量が極端に少なくデータが揃わない為、ここでは省きます)6263や6265の現在の相場は軽く1000万円を超えており、そう考えると当時の定価は安く感じますが、物価や平均年収等も全く違うので一概に安いとは言い切れません。あくまでも結果論です。
1975年(昭和50年)は、皇太子夫妻が沖縄のひめゆりの塔参拝中に火炎ビンを投げられたり、サウジアラビアのフアイサル国王が暗殺されてしまう等、物騒な出来事も多く決して平和な年ではなかったようです。
尚、ペヤングソースやきそばを発売したのも同年であり、カップ焼きそば普及に一役買っています。そしてカシオ計算機が電卓を発売しました。価格4500円也。
「ワクシつくる人ボク食べる人」が流行語になりました。この流行語はとあるインスタントラーメンのCMからなのですが、男女差別だと指摘されて後に放送中止に追い込まれました。
1980年
6265 ¥380,000
ROLEX / 6265
5年前と比べて約11万円、40%程値上げした事がわかります。ここからロレックスの定価改定の値上げ幅は大きくなっていきます。
1980年代は俗に言うバブル景気の為、ロレックスも大幅な値上げに踏み切ったのかもしれません。
同年はモスクワオリンピックの年ですが、日本はボイコットで不参加となっています。
また、ゲームウォッチやルービック・キューブ、ドンジャラなど懐かしの玩具がヒットしました。
今やすっかり私達の生活に定着したウォッシュレットも同年にヒットしています。
尚、ほぼ毎年新作が公開されるドラえもんの映画第一作目「映画ドラえもん のび太の恐竜」が公開されたのはこの年です。
1988年
16520 ¥510,000
ROLEX / 16520
前回と比べると約35%の値上げに踏み込んだ時期ですね。値上げというよりモデルチェンジといえば良いでしょうか。デイトナ第四世代の誕生です。恐らく一般的なデイトナのイメージはこの辺りから始まっていると思います。
ちなみにデイトナはこの16520から自動巻きになりました。かの有名なエル・プリメロベースのcal.4030搭載機です。そして風防はプラスチックからサファイアクリスタルに変更し、100m防水を獲得しました。
世間は東京ドームがオープンし、リクルート事件が起き、光ゲンジが登場し、日産シーマの初代デビューによって所謂「シーマ現象」が起き、そしてドラゴンクエストIIIが発売された年でした。
1990年のバブルに向けて絶好調だった時期の日本です。しかし世間の興味は腕時計より不動産へ集まり、不動産価格はまさに天井知らずに上がっていった時期だそうです。その裏でデイトナはゆっくりと牙を研ぎ続けていたのでしょう。
1992年
16520 ¥597,400
ROLEX / 16520
今回は1988年と比べ、約9万円弱の値上がりに止まっています。止まっていると言っても約17%程も値上がりしているのですが。90年代に入ると日本はバブル経済絶頂期となり、所謂ハイブランドを身に着ける事がステータス化していきます。また、スイスでフランク・ミュラーが創業されたのもこの1992年です。
尚、世間では「風船おじさん」が話題となりました。周りの忠告等を一切受け入れずに「いってきます」と言い残し風船に乗ってアメリカに向かったおじさんです。懐かしいですね。
ちなみに2022年現在、未だにおじさんの消息は分かっていません。一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
そして1992年はG-SHOCKが大ブレイク。イチローが愛用し、イチローモデルと言われたDW-6000D-1も大ヒットしました。
ちなみにロレックスはといいますと、パールマスターやヨットマスターが登場した年になりました。
2000年
116520 ¥808,500
ROLEX / 116520
Cal.4130を搭載した116520が登場し、時計業界では大変な話題になりました。定価が上がったというよりモデルチェンジでの新定価といったところでしょう。キャリバー含め16520の頃よりかなりパワーアップしているので当然と言えば当然だとは思います。前作より約35%程高い価格設定となっています。
このモデルは現在のデイトナの礎を築いたと言っても過言ではありません。幾度となくマイナーチェンジを繰り返し、レア個体も多数存在していますね。後に17年間というロングセラーとなるこのデイトナは、腕時計代表格モデルとしても抜群の知名度を誇っています。デイトナと聞くとこのモデルが初めに思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
現行の116500LNはホワイト文字盤が人気ですが、116520はブラック文字盤が人気でした。
ちなみに1990年代後半からは、既に正規店でデイトナを購入する事は難しくなっていたようです。
2000年問題として1月1日にコンピューターが誤作動を起こすのではという話題で世間は騒いだが、特に大きな問題は起こりませんでした。
この年に新紙幣の2000円札が発行されたりしましたが、ここ数年見た事がありませんね。あれは一体何だったのでしょう…。
2007年
116520 ¥924,000
ROLEX / 116520
約14%程定価が上がりました。2004年頃には針が太くなったり、2006年頃にはインナーサークルにルーレット刻印が刻まれるといったマイナーチェンジもされてコストも上がっているでしょうし、当然といえば当然ですね。
しかし2007年の時点ではまだ100万円を切っていたんですね。。
世間一般のニュースで言うと、2007年は食品メーカーの偽造や改ざん問題が多発しました。
それに加え中国製品から有害物質や発がん性物質が発見され、消費者の安全意識が高まったのもこの年でした。
iPod touchやビリーズブートキャンプが発売され、大ヒット・大流行しました。
後に宮崎県知事に就任する東国原英夫氏が所信表明演説で「どげんかせんといかん」と発言し、マスコミ等がそれを取り上げた結果「どげんかせんといかん」は流行語になりました。
2013年
116520 ¥1,092,000
ROLEX / 116520
デイトナは約18%値上げされ、とうとう100万円の大台を超えました。
更にこの年から夜光塗料がルミノバからクロマライトに変更されています。
腕時計業界のニュースでは他ブランドですが、ジラールぺルゴの2013年の新作『コンスタント・エスケープメント L.M.』が“The Geneva Watchmaking Grand Prix(ジュネーヴ時計グランプリ)”で最優秀賞である“L’Aiguille d’Or(レ ギュイ ドール=「金の針」の意)”賞を受賞しました。
今ではすっかり皆の生活に定着した「コンビニコーヒー」もこの頃から発売を開始しました。
周りの評価が最も高いセブンイレブンのコーヒーが意外にも一番後発だったそうです。
ゲーム業界では抜群の知名度を誇るゲームアプリ”パズル&ドラゴン”(通称パズドラ)が大ヒットし、「ベストチーム・オブ・ザ・イヤー2013」等様々な賞をを受賞しました。
2014年
116520 ¥1,123,000
前年より31,000円の値上げとなりました。この頃から値上げの頻度が上がってきていますね。
保証書が旧々タイプから旧タイプに切り替わったのも2014年です。現行の新ギャラになる前の物なので。馴染みがある方も多いかと思います。
思えばこの頃のギャランティカードが一番記載されている情報量が多かったような気がします。ブレスの素材や文字盤の色も記載されていました(モデル名は省かれるようになりましたが)
他ブランドを取り上げると、オーデマピゲが何とパワーリザーブ237時間のロイヤル オーク オフショア トゥールビヨン・クロノグラフをリリースしました。いっぱいに巻いて237時間…約10日間近く高精度の時計が稼働し続けると考えるとすごいですよね。
そして翌年の2015年頃、マイナーチェンジによりバックル中板の仕様が変更されます。個人的には梨地が格好良いと思っていたので、残念に思った記憶があります。これが最後のマイナーチェンジになり、最終ロットの鏡面バックルはレア個体として更に大きくプレミア価格がつきました。
続く2016年、ロレックスはデイトナにモデルチェンジを行い、116500LNが発表される事となります。
116500LNの人気たるや語らずとも周知の事実だと思います。
2018年
116500LN ¥1,274,000
ROLEX / 116500LN
2014年から4年後の2018年、定価改定により約13%の値上げが行われました。とは言っても2016年にデイトナがモデルチェンジされているので、2014年からの単純な値上げという訳ではありません。
この年からロレックスの怒涛の値上げラッシュが始まります。
他ブランドではゼニスのデファイ エル・プリメロ21の新色、ブルーが発売され大変な人気が出ました。
時計以外の話題では、平昌五輪で日本は冬季五輪過去最高のメダル13個を獲得、大谷翔平選手がメジャーリーグで二刀流で活躍し、FCバルセロナのイニエスタが年俸32億円でJリーグヴィッセル神戸に移籍、日大アメフト部悪質タックル問題があったり、良くも悪くもスポーツで賑わった1年でした。
また、安室奈美恵さんが芸能活動を引退するという寂しいニュースもありました。
2019年
116500LN ¥1,309,000
ROLEX / 116500LN
前年から約3%弱の値上がりです。もはや時計界のキングに誰も口を挟める状況ではありませんね。
2019年の腕時計といえば、APの四半世紀ぶりの新作「コード11.59 byオーデマ ピゲ」が市場の話題をさらった事が記憶に新しいですね。
一方ロレックスは、バーゼルワールド2019でバットマンが復活を遂げ、更にGMTのメテオライトが登場したりと、話題には事欠きませんでした。
2019年最大のニュースはやはり新元号でしょう。2019年4月30日で平成は終わり、5月1日から新元号の令和になりました。これは日本人にとって大変大きなニュースと言えます。
タピオカやPayPay等が流行したのも2019年でした。タピオカ店が出来ては無くなりを繰り返し、2022年の現在はほとんど見なくなりました。PayPayはすっかり生活に根付き、日本の電子化に一役買った立役者と言えるでしょう。
2020年
116500LN ¥1,387,100
ROLEX / 116500LN
まだまだロレックスの値上げラッシュは続きます。デイトナに関しては翌年より約5%の値上がりです。普通ならこんなペースでメーカーが値上げすると世の中は苦情で溢れたりしそうなものですが、ロレックスの定価はあってないようなものなので、基本定価が値上がりしても誰も文句を言いません。
尚、2020年のロレックスの新作はデイトナに次ぐロレックスの顔のサブマリーナー系がモデルチェンジを行いました。まさかのサイズアップで41mmのサブマリーナーには賛否両論ありましたね。
そして2020年、コロナの時代がやってきました。コロナのせいでメーカーの新作発表も遅れたり、色々マイナスな影響を被ってしまう中、それでもめげずにユーザーの期待に応えてくれた各ブランドには本当に感謝したいです。
2020年のヒット作や流行りを思い出そうと思いましたが、オリンピックは延期になりましたし本当にコロナしか出てこないのでここで〆ます。
2021年
116500LN ¥1,457,500
ROLEX / 116500LN
当時もあるとは思っていましたがやはり値上げがありました。前年より5%の値上げです。
もうロレックスも強気というより、定価関係なく第二市場が盛り上がっている現実を受け、もういくらにしても売れるだろうという事に気づいたのだと思います。
2021年は各ブランドの新作が豊作だった年と言えるでしょう。
ZENITHのクロノマスター スポーツやTUDORのブラックベイ クロノの人気が爆発し、並行価格ではプレミア価格になりました。
思えば外出自粛で消費が落ち込む中、人々は使い道を探すのが難しいお金を、ネットで腕時計やブランド物を探して購入するという傾向が広がった年だった気がします。
この頃のニュースを見ていて心が痛かった出来事は、コロナ禍によってペットブームが起こり、物のように簡単に動物を買ってしまう人が増えたという事ですね。いわゆる「ペット産業」が盛り上がった年でもありました。
2022年
116500LN ¥1,609,300
ROLEX / 116500LN
そして今年、ロレックスの値上げは止まる事を知りません。5年連続です。
2022年1月1日に定価の改定がありました。元旦から値上げです。
ステンレスモデルは10%以上の値上げされ、金無垢やコンビモデルも~3%程度値上がりました。
※需要があまりなさそうな一部モデルは値下げされました。
8月にも定価改定があるのではないかと噂がありましたが、今年の8月には定価改定はありませんでした。(TUDORは定価改定された模様です)
デイトナも約10%値上がりし160万円を超え、200万円の未来も見えてきてしまいました。3年後の今頃は200万円を超えているのでは…?と勘ぐってしまいます。3年後にはディスコンになっている可能性もありますが。。
と、いうように定価の推移を追う事によって、興味本位で調べたりするので、その時の世界や日本の情勢等もわかったり、懐かしい気分に浸れたりします。歴史の勉強にもなりますね。
デイトナ含めロレックスの定価もこれ以上上がってしまうと、一般人が買えなくなり実用時計からかけ離れてしまうのでほどほどにしてもらいたいですね(並行価格もですが)
※一部の説明文や画像はインターネットより引用